鳩時計の現状


ドイツ 伝統の黒い森の鳩時計を証明するマーク

現在、鳩時計は、本国ドイツの他、スイス、日本、韓国、中国で作られています。(2011年現在の当店の知る限りの情報として)

ドイツ本国では、発祥の地、黒い森(スイス、フランスとの国境付近)で1640年ころから作られるようになりました。最盛期には、年間、約30万個ほど作られた鳩時計(正確な数字ではありませんが、1999年の最盛期のおおまかな数字)ですが、現在では、総生産20万個に満たないと思われます。手作りの鳩時計業界ですが、やはり、時代の流れ、吸収合併が激しい業界となっています。世界的には、鳩時計発祥の地黒い森で作られる昔ながらの錘で動かす鳩時計が主流で、全体の9割以上を占めているようです。本物のドイツ製鳩時計に使われるムーブメントは、2種類あり、最も信頼されているレギュラと唯一自社ブランドで製造するH社です。また、それぞれの部品メーカー(例えば、錘、フイゴ、ゴングなど)にとっては、鳩時計の生産数は限られており、また、競争相手がいないため、各部品メーカーは、モノポリー状態となっています。そのため、毎年お決まりごとのように価格が跳ね上がっています。オルゴールも同様、メーカーが数少なく、鳩時計用オルゴールを生産するのは、4社ほどで、クオリティと価格/生産能力の面からスイス製が主流となっています。近年、コピー品/類似品が横行する中、黒い森の各メーカーでは、消費者が本物の鳩時計とコピー品/類似品と区別できるように、時計協会を立ち上げ、シュヴァルツヴァルト原産の本物の鳩時計には、認定証を発行し始めました。しかしながら、主要顧客であるアメリカでのインターネット販売の比率が50%以上のため、製品作りがかわってきてしまいました。時計の中身ではなく、“価格”と”画面上での見た目”を重視しているため、外国製パーツを使い、荒い作りになり、サイズを小さくし安く販売したりといったことが行われるようになってしまいました。とりわけ、“価格”、“見た目”、“ドイツの鳩時計”をうたい文句にしたネット販売を想定した電子音の電池式鳩時計を、各社が作り始めました。時計協会の認定しない電池時計を、あたかも本物であるかのようにメーカーは作り、業者が販売するようになりました。メーカーとしては、要望があれば、もの作りをする。とりわけ、インターネット販売において、そんな“もの”を作るメーカーと販売業者がくんでいる残念な状況があります。いよいよドイツ本国でも中国製鳩時計が今年から販売が始まり、“伝統の黒い森の鳩時計”とうたい電池を使った電子音タイプの鳩時計がそれです。訴訟問題にもなりかねないような事態になりましたが、電池の鳩時計は、“伝統の黒い森の鳩時計”ではなく、一般的な総称である“鳩時計”であるいう表現に変更することによりこの問題も小さくなっていきましたが、今後、多くの中国製品が出回りそうです。ドイツ製とうたいながら中国や東欧の部品を使う類似の電池品や安さを追及するメーカーが自分の首を絞めてしまったようで、本場ドイツに中国製のコピー品の販売ルートを築いてしまいました。残念な限りです。


スイスにも、鳩時計を作るメーカーが1社あり、スイス観光のお土産のひとつとして、日本人観光客には知られているようです。ある有名な映画の中でも言われているように、鳩時計はスイスの物と誤解されがちです。お土産屋さんで見かける文字盤に”MADE IN GERMANY”の記載のない本物の鳩時計はドイツ製になります。スイスシャレーのかわいいタイプの鳩時計を作っています。時計の機械はドイツ製を使用し、本体は、スイス/チューリッヒ近郊で作られているようです。


日本は、昭和40年代の初めまで機械式の鳩時計を作っていた鳩時計を愛用する主要国だったのです。高度成長期という時代の流れによる利便性と生産過多により、生産が終わってしまったようですが、日本では、2-3社で鳩時計が作られていたようで、1社がドイツ製のムーブメントをコピーしたもの、もう1社は、試行錯誤してオリジナリティあるムーブメントに仕上げていました。日本では、現在も、電池式の鳩時計を製造しています。しかしながら、日本の時計メーカーらしい点は、業界を先導して薄利多売を行いながら、また、企業の効率を追求しながらも(電池式に特化し)、鳩時計の命である“趣”が必要である点をきちんと考慮しているため、昔ながらのふいご/笛の音による時報を奏で続けているモデルも残しています。私が思うところは、コピー品に終わるのではなく、企業として、効率を追求しながらも、心に残る鳩時計を模索している近代の鳩時計を作っているように思います。

韓国でも掛け時計といえば、鳩時計といわれるくらい鳩時計好きな国民のようです。”鳩時計”という名前のものが好きで、その伝統や趣ではなく、価格面で優れた電子音の鳩時計が一般的のようです。

大国中国でも、鳩時計が製造されており、ゼンマイ式の機械式鳩時計や電池式鳩時計が作られています。中国製=安価というイメージですが、あるメーカーは、完全手彫り(但し、コピーのため、デザインが乏しく、粗悪なつくりらしい)のため、作りの割りに、高額な鳩時計のようです。また、現在は粗悪な作りながら、完全手彫りに徹し、ゼンマイを動力とする機械式に徹し、またコピーするモデルも昔作られていた手の込んだからくりモデルも作るなど、昔ながらの鳩時計作りから始めている点からすると、将来は、強いメーカーとなるかもしれません。もちろん、基本は、電子音の大量生産品です。しかしながら、いずれ、ドイツメーカーの名前で(もしかしたら、中国のメーカーとして)、中国製の鳩時計が、世界の安価な価格帯のマーケットを飲み込むと思います。そして、デザイン性豊かな伝統的な木彫り鳩時計だけが、本当の意味での、ドイツ製として、生き残ることと思います。すでに、その動きは出始めています。ドイツメーカーがドイツ製として販売している電池の電子音の鳩時計の時計部分は全て中国製です。



                                          
          

ヴァルト
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